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骨質が弱くても大丈夫?高齢の方のインプラント治療

2025/10/03

カテゴリー:

高齢者が悩んでいる様子の画像

高齢でもインプラントはできるの?

「高齢になってもインプラントはできるの?」
「自分の骨が弱っている気がして心配…」

そんな不安をお持ちの方は少なくありません。年齢を重ねると骨がやわらかくなりやすく、特に上あごの奥歯では「ちゃんと固定できるのだろうか?」と心配される方が多いです。

しかしご安心ください。インプラント治療では、事前にCTで骨の状態を確認でき、必要に応じて骨を補う処置や治療の工夫を行うことで、多くの高齢の方でも治療が可能です。

この記事では、インプラントに大切な「骨質(D1〜D4分類)」と高齢者の骨の特徴、さらに安全に治療を行うために欠かせない全身的な健康管理についてご紹介します。

この記事の内容


骨質とは?インプラントにおける4つの分類

インプラントの成功に大きく関わるのが、あごの骨の硬さ(骨質)です。Mischの分類に基づき、骨質は4つのタイプに分けられます。

骨質分類特徴主な部位インプラント治療への影響
D1ほとんどが緻密骨で非常に硬い下あご前歯部初期固定は得やすいが血流が乏しく治癒は遅め
D2厚い皮質骨+海綿骨下あご臼歯部、上あご前歯部最もバランスが良く、成功率が高い
D3薄い皮質骨+多めの海綿骨上あご臼歯部などやや柔らかく初期固定は弱め。治癒は良好
D4ほぼ海綿骨で非常に柔らかい上あご奥歯、上あご結節部初期固定が難しく、骨造成などが必要になることも

骨の硬さ(骨密度)とインプラントの関係

インプラント治療において、骨の硬さ(骨密度)は初期固定や治療成功率に大きな影響を与えます。

MischによるCT値分類を図で示したもの
  • Mischの分類とHU値
    調査によると、CTで測定される骨のX線吸収値(HU値)をもとにD1〜D4の骨質分類が提案されており、インプラント埋入時の初期固定性と関連があることが示されています(※1)。
  • 硬すぎても柔らかすぎてもリスクになる
    また別の調査では、非常に硬い骨(1,000HU超)や極端に柔らかい骨(400HU未満)は、インプラント失敗のリスクと関連する可能性があると報告されています(※2)。

つまり、「硬ければ良い」「柔らかければ治りやすい」という単純な話ではなく、骨質に応じた治療計画を立てることが成功のカギ となります。


高齢者に多い骨質の特徴

高齢になると、骨の量や密度が減少しやすく、骨質は柔らかめ(D3〜D4)に傾く傾向があります。

  • 下あごは比較的骨がしっかりしているため、高齢でもD2に近いことが多い
  • 上あご奥歯は元々海綿骨が多く、加齢でさらに柔らかくなりやすい

つまり、部位や年齢によって骨質は変化しますが、治療時にはそれに応じた方法を選ぶことで対応可能です。


骨質だけじゃない!全身の健康状態も大切

インプラントはあごの骨に人工歯根を埋め込む外科処置です。そのため、骨質だけでなく全身の健康状態も考慮する必要があります。

高齢の方では以下のような病気や服薬が増えるため、注意が必要です。

  • 高血圧や心疾患
  • 糖尿病
  • 骨粗鬆症(ビスフォスフォネート製剤など)
  • 抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)
  • 免疫抑制剤の使用

これらは手術時の出血や治癒の遅れ、感染リスクに影響することがあります。
そのため当院では、インプラント治療を検討する際に必ず 全身の健康状態やお薬の内容を確認 し、安全性をしっかりと判断しています。

👉『当院の詳しいインプラント治療についてはこちら』


骨質はどうやって診断する?

「自分の骨は大丈夫なのか?」という疑問に対して、歯科では以下のように診断します。

CT検査(事前診断)

歯科用CTで骨の厚み・高さ・密度を三次元的に確認します。

アネックスデンタルクリニックのCT撮影に使用する機器の写真

手術時の感覚

ドリルで骨を削るときの硬さの抵抗感から骨質を判定します。

埋入トルク(力の数値化)

インプラントをねじ込む際の力(Ncm)も骨質の目安になります。

👉 このように 「CTで予測」+「術中に確定」 という流れで骨質を判断します。


まとめ

高齢になると骨質が柔らかくなる傾向はありますが、それだけで「インプラントができない」ということはありません。

  • CTで骨の状態を事前に把握
  • 骨造成や治癒期間の延長などの工夫
  • 全身の健康状態や服薬歴の確認

これらを踏まえて総合的に診断・治療計画を立てることで、多くの高齢の方でも安心してインプラント治療を受けることが可能です。

「骨質が弱いから無理かも…」と諦める必要はありません。
まずは一度CT検査で骨の状態を確認し、安心できる治療計画を一緒に考えていきましょう。


参考文献

※1: Misch CE. Contemporary Implant Dentistry. CT値を用いた骨質分類と初期固定性との関連について報告。 PMCリンク
※2: Friberg B, et al. Preoperative Computed Tomography-Derived Bone Density Predicts Implant Failure Risk. 骨密度(HU値)とインプラント失敗リスクとの関連を報告。 PMCリンク

この記事は、西宮北口 アネックスデンタルクリニック院長・岡本が監修しています。