
歯科治療を受けるときに「オエッ」となってしまうことはありませんか?
これは嘔吐反射(おうとはんしゃ)と呼ばれる体の防御反応で、決して珍しいことではありません。
特に歯科医院では、型どりやレントゲン撮影、奥歯の治療などで嘔吐反射が出やすいため、「治療がつらい…」「歯医者に行きたくない…」と感じてしまう方も少なくありません。
しかし近年では、嘔吐反射が強い方でも安心して治療を受けられるように、さまざまな工夫や新しい機器が導入されています。その中でも、特に注目されているのがトリオス(TRIOS)スキャナーです。
そして今回は、嘔吐反射と型どりの関係、そしてトリオススキャナーがどのように役立つのかについて、わかりやすくご紹介します。
この記事の内容
嘔吐反射とは
嘔吐反射とは、口の奥やのどの粘膜に刺激が加わることで起こる自然な反応です。
本来は異物が入ってきたときに体を守るための働きですが、一方で歯科治療の場面ではこの反応が強く出てしまうことがあります。
特に出やすいシーンとしては…
・ 型どりの材料をお口に入れたとき
・レントゲン撮影でフィルムやセンサーを奥歯に置いたとき
・奥歯の治療やクリーニングを受けているとき
などが挙げられます。
そのため、「自分だけが敏感なのでは…?」と思う方も少なくありません。しかし実際には、多くの患者さんが経験しているごく自然な症状なのです。
さらに、特に型どりで嘔吐反射が出やすい人でも、呼吸法を工夫したり、材料を少量ずつ装着したりすることで、症状を軽くできる場合があります。そして何より、最新のトリオススキャナーなどを使えば、従来の印象材を使わずに歯型をとれるため、かなり楽に型どりが可能になります。
トリオススキャナーとは
トリオスは、歯の型どりをお口の中でカメラでスキャンしてデータにする機械です。

従来のように粘土のような材料を口に入れる必要はなく、小さなカメラを軽く口の中でなぞるだけで、歯の形や歯並びを正確に記録できます。
嘔吐反射が強い方にトリオスがおすすめな理由として、さまざまな特徴があります。
1. 奥まで材料を入れない
→ のどの方に触れないため、吐き気を感じにくく安心です。
2. 短時間で完了
→ 数分でスキャンが終わり、固まるのを待つ必要がありません。
3. やり直しが簡単
→ データの一部を取り直すだけで済むため、何度も型どりをやり直す不快感がありません。
4. 精度が高い
→ デジタルデータで細部まで正確に記録できるため、被せ物や詰め物がぴったり合いやすくなります。
トリオスの活用シーン
トリオスはさまざまな治療で役立ちます。

1.被せ物・詰め物の型どり
→ 精密で違和感の少ない補綴物を作製することが可能になります。
2.矯正治療
→ 歯並びを3Dデータで記録できるため、矯正後のシミュレーションを行えることもあります。
3. インプラント治療
→ 骨や歯ぐきの状態と合わせて、より正確な治療計画を立てられます。
4.定期検診での比較
→ 数年前のデータと照らし合わせることで、歯のすり減りや歯ぐきの変化を視覚的に確認できます。
トリオス以外の対処法
トリオスのような口腔内スキャナー以外でも、嘔吐反射を和らげる方法はいくつかあります。
1.鼻呼吸を意識する
→型どりや処置中は口ではなく鼻で深く呼吸することで、楽に過ごしやすくなります。
2.足を上げてつま先に力を入れる
→注意がそちらに向くため、えづきが軽減されやすいのが特徴です。
3.舌を前に出す
→舌根が下がりにくくなるため、嘔吐反射が起こりにくくなります。
4.表面麻酔を使う
→咽頭部や口蓋をしびれさせることで、刺激を感じにくくできます。
5.姿勢の工夫
→頭を少し起こした状態で型どりを行うと、喉に流れ込む感覚が減りやすくなります。
6.リラックス法
→深呼吸や音楽などで緊張を和らげると、反射が出にくくなります。
まとめ
嘔吐反射が心配で歯科治療をためらっている方も、どうぞご安心ください。えづいてしまうのは決して特別なことではなく、多くの方にみられる自然な反応です。そのため、恥ずかしいことでも我慢すべきことでもありません。
当院では、患者さまにできるだけ負担をかけず治療を受けていただけるよう、さまざまな工夫を行っています。例えば、治療の手順をあらかじめ丁寧にご説明したり、処置を少しずつ進めたりするだけでも、不安は大きく和らぎます。
また、緊張をほぐすための呼吸法や、気持ちをそらす簡単なコツを取り入れることで、えづきが軽減される方も多くいらっしゃいます。
さらに、治療が不安な方には、事前にしっかり説明し、無理のないペースで進めていきます。
「型取りが苦手」「えづきやすいから治療が不安」と感じる方も、どうぞ安心してご相談ください。一緒に最適な方法を見つけ、快適に治療を進めていきましょう。

この記事は、アネックスデンタルクリニック院長・岡本が監修しています。