
今回は、「歯石が多い=歯周病が進行している?」という疑問についてお話しします。
歯石がたくさんついていると、「歯周病がかなり進んでいるのでは?」と思われる方も多いかもしれません。
しかし、実は歯周病の進行度は、歯石の量だけでは判断できません。
見た目では歯石が少なくても、歯茎の中で歯周病が進行している場合があります。
では、なぜこのような違いがあるのでしょうか?
今回は、歯石がつく場所と歯周病の進行との関係、歯周病の検査や治療、予防のポイントについて詳しく解説していきます。
この記事の内容
歯周病は見た目だけでは分からない?
突然ですが、ここでクイズです。
下の2人のうち、どちらの方が歯周病が進行しているように感じますか?
①

②

一見すると、①の方が歯石が多いように見えるかもしれません。
そのため、「①の方が歯周病が進行しているのでは?」と思われる方も多いのではないでしょうか?
しかし、実は違います。2人とも歯周病ですが、より進行しているのは②の方です。
「見た目では①の方が歯石が多そうなのに、なぜ?」と疑問に思われるかもしれません。
実は、歯周病の進行度は、歯石の量だけでは判断できません。
では、なぜ②の方が歯周病が進行しているのでしょうか?
そのポイントは、歯石がついている場所にあります。
歯茎の上の歯石と、歯茎の中の歯石
それでは、2人の歯周組織検査の結果を見てみましょう。
①

②

②の方は歯周ポケットが深くなっています。さらに、歯茎の中にも多くの歯石がついている状態でした。
特に注目していただきたいのが、下の前歯です。
下の前歯を見ると、歯茎の腫れもかなり見られます。
このように、歯茎の中に歯石がたまると、歯周病が進行している可能性があります。
一方で、①の方にも歯石はついています。
しかし、主についているのは歯茎より上の部分です。
そのため、②の方と比べると歯周病の進行度は低い状態です。
また、歯茎の腫れもそれほど強くありません。
このように、歯周病の状態を判断するときは、歯石の量だけを見るわけではありません。
もちろん、歯石が多くついているところも注意が必要です。
しかし、それ以上に大切なのが、「歯石がどこについているか」ということです。
特に注意したいのが、歯茎の中についている歯石です。歯茎の中とは、歯周ポケットの中のことです。
歯周ポケットの中は、ご自身で確認することが難しい場所です。
そのため、気づかないうちに歯石がたまり、歯周病が進行していることもあります。
歯茎の中に歯石がつくってどういうこと?
「歯茎の中に歯石がつくって、どういう状態なの?」このように疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
実際に、歯茎の中にある歯石は、普段の生活では見ることができません。
こちらは、歯周病が進行した方の親知らずを抜歯した際の写真です。

歯の周りをよく見ると、黒っぽいものが帯状についているのが分かると思います。
実は、これが歯茎の中に隠れていた歯石です。
歯茎の中についた歯石は、歯周ポケットの奥にあります。そのため、鏡で見ても確認することは難しいです。
また、歯石というと、白や黄色っぽいものをイメージする方も多いかもしれません。
しかし、歯茎の中にできた歯石は、黒っぽく見えることがあります。
その理由の一つが、歯周ポケットの中で出血した血液などが歯石に付着するためです。
では、なぜ歯周ポケットの中で出血するのでしょうか?
それは、その部分で歯周病による炎症が続いていたためです。
歯周病が進行すると、歯と歯茎の間にある歯周ポケットが深くなります。
そして、その奥には歯ブラシが届きにくくなり、その結果、歯垢(プラーク)がたまりやすくなります。
さらに、歯垢が石灰化すると歯石になります。
このようにして、歯茎の中にも歯石がたまっていくことがあります。
つまり、見えている歯石だけがすべてではありません。
一見すると歯石が少なく見えても、歯茎の中に歯石が隠れている場合があります。
そして、その見えない部分で歯周病が進行していることもあります。
そのため、歯周病の状態を確認するには、見た目だけで判断するのではなく、歯周ポケットの深さや歯茎の状態などを確認することが大切です。
歯周病が「サイレントキラー」と呼ばれる理由
では、ここまで歯周病が進行するまでに、何か症状はあったのでしょうか?
実は、ほとんど症状がなかったケースもあります。
「歯周病なら、歯茎が痛くなかったり、歯がグラグラしたりするのでは?」と思われている方もいるかもしれません。
しかし、歯周病は必ずしも分かりやすい症状が出るとは限りません。
初期の段階では、痛みや強い腫れなどを感じないこともあります。
また、歯周病が進行すると、歯を支えている骨にも影響が及ぶことがあります。
しかし、それでも強い痛みを感じない場合があります。
そのため、「痛くないから大丈夫」と思ってしまうのは注意が必要です。
実際には、症状がほとんどないまま、歯茎の中で炎症が進んでいる可能性もあるのです。
こうした特徴から、歯周病は「サイレントキラー」と呼ばれることもあります。
つまり、自覚症状が少ないまま進行することがある病気ということです。
では、症状がない場合でも、歯周病の進行に気づくためにはどうすればよいのでしょうか?
そこで大切になるのが、歯周病の検査と定期的なメンテナンスです。
自覚症状がなくても、検査を受けることで、歯茎の状態や歯周ポケットの深さなどを確認できます。
「特に気になる症状がない」という方も、一度お口の状態をチェックしてみることをおすすめします。
歯周病かどうかはどうやって分かる?
ここまでお話ししたように、歯周病は自覚症状が少ないまま進行することがあります。
では、歯周病かどうかは、どのように確認するのでしょうか?
実は、歯周病は見た目だけでは正確に判断できません。
歯石がたくさんついているからといって、必ずしも歯周病が重症とは限りません。
反対に、見た目では歯石が少なくても、歯茎の中で歯周病が進行している場合もあります。
そのため、歯科医院ではいくつかの検査を組み合わせて、お口の状態を確認します。
まず、必要に応じてレントゲン撮影を行います。
レントゲンでは、目で直接見ることができない部分を確認できます。
特に、歯を支えている骨の状態などを確認することができます。
さらに、歯周組織検査も行います。
歯周組織検査では、歯周ポケットの深さを測定します。
また、歯茎からの出血があるかどうかも確認します。
このような検査を行うことで、歯茎の表面だけでは分からない状態を確認できます。
また、歯石が多くついている場合には、小さなレントゲンを何枚かに分けて撮影することもあります。
そうすることで、歯と歯の間や歯茎の中など、歯石がついている場所をより詳しく確認できます。
このように、歯周病の進行度を確認するためには、見た目だけで判断するのではなく、検査によってお口の中を詳しく確認することが大切です。
特に、痛みや腫れなどの症状がない場合でも、歯周病が進行していることがあります。
そのため、「何も症状がないから大丈夫」と思わずに、定期的に歯周病の検査を受けることが大切です。
歯周病治療は「歯石を取ったら終わり」ではありません
今回の②の方は、その後、歯科医院へ通院していただきました。
そして、歯茎の中についていた歯石を、数回に分けて除去しました。
歯茎の中にある歯石は、目で直接確認することが難しい場所にあります。
そのため、一度の処置ですべての歯石を取り除くことが難しい場合があります。
また、歯周ポケットが深くなっている場合は、場所によって処置の難しさも異なります。
そこで、お口の状態を確認しながら、何回かに分けて少しずつ歯石を除去していきます。
しかし、ここで大切なのが、「歯石をすべて除去できたら治療終了」というわけではないということです。
歯石を取り除いた後も、歯茎の状態が改善しているかを確認する必要があります。
そのため、治療後にはもう一度歯周組織検査を行います。
そこで、次のような項目を確認します。
- 歯石の取り残しがないか
- 歯周ポケットがどのくらい改善したか
- 歯茎の腫れが落ち着いているか
- 歯茎からの出血が減っているか
このように、治療前と治療後の状態を比較します。
そして、歯茎の状態が改善していれば、定期検診やメンテナンスへ移行します。
一方で、まだ歯石が残っている場合や歯茎の腫れ、炎症が続いていることもあります。
そのような場合は、必要に応じて治療を継続します。
つまり、歯周病治療では、「歯石を取ること」だけが目的ではありません。
歯石を除去した後に、歯茎の状態がどのように変化したのかを確認することも大切です。
そして、改善した状態をできるだけ長く維持するためには、毎日のセルフケアと定期的なメンテナンスも重要になります。
歯周病は、一度治療したら終わりというものではありません。
その後もお口の状態を定期的に確認し、良い状態を維持していくことが大切です。
実際の治療経過を見てみましょう
それでは、②の方の治療経過を見てみましょう。
【初診時】


初診時には、歯石が多く付着していました。
まず、レントゲン撮影などの検査を行い、歯石がどこについているのかを確認します。
さらに、歯を支えている骨の状態についても確認します。
このような検査を行い、お口の中の状態を詳しく把握します。
その結果をもとに、一人ひとりのお口の状態に合わせて治療を進めていきます。
【治療途中】

治療を進めている途中では、まだ歯石が残っているため、下の前歯の歯茎には腫れが見られます。
また、歯石だけでなく、歯磨きによる磨き残しも確認されました。
そこで、歯科医院での歯石除去だけでなく、毎日の歯磨きについても確認します。
歯ブラシの当て方や動かし方、歯間ブラシの使い方についてもご説明しました。
このような指導を、TBI(ブラッシング指導)といいます。
歯周病の改善には、歯科医院での治療だけでなく、毎日のセルフケアも欠かせません。
そのため、患者さまご自身で正しくケアできるようにサポートすることも大切です。
【歯石除去後】

ビフォー

アフター


歯茎の中にあった歯石を少しずつ除去していきました。さらに、毎日の歯磨きにも取り組んでいただきました。
その結果、徐々に歯茎の腫れが落ち着いてきました。
ビフォーアフターで比較してみると、歯茎の色や腫れが改善していることが分かります。
このように、歯周病の治療では、歯石を除去することだけでなく、毎日のセルフケアを見直すことも、とても重要です。
歯科医院で歯石をきれいに除去しても、毎日の歯磨きが不十分だと、再び歯垢(プラーク)がたまってしまいます。
そのため、歯科医院での治療と毎日のセルフケアを組み合わせることが、歯周病の改善や再発予防につながります。
また、治療後も定期的に歯科医院でお口の状態を確認することが大切です。
きれいになった状態を維持するためにも、定期的なメンテナンスを続けていきましょう。
歯周病予防には「定期的なチェック」と「毎日ケア」を
「定期検診に行っているから、歯周病や虫歯にはならない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、定期検診は、病気にならないことを保証するものではありません。
定期検診の大切な目的の一つは、現在のお口の状態を確認することです。
そして、良い状態を維持できているかを定期的にチェックします。
もし問題が見つかった場合も、早めに対処することができます。
そのため、特に症状がないときでも、定期的にお口の状態を確認することが大切です。
一方で、歯科医院でのチェックだけでは十分ではありません。
毎日のセルフケアも同じくらい重要です。
歯ブラシで丁寧に歯を磨くことはもちろん、必要に応じて歯間ブラシやデンタルフロスも使用しましょう。
歯と歯の間など、歯ブラシだけでは汚れが残りやすい場所もしっかりケアすることが大切です。
また、お口の状態は一人ひとり異なります。
そのため、「歯間ブラシとフロスのどちらを使えばいいの?」と迷われる方もいるかもしれません。
そのような場合は、歯科医院で相談してみましょう。
ご自身のお口に合った歯ブラシや補助清掃用具の使い方をお伝えします。
このように、歯科医院での定期的なチェックと、毎日のセルフケアの両方を続けることが大切です。
歯周病は、自覚症状が出てからではなく、症状がないうちからお口の状態を確認しておきましょう。
いつまでもご自身の歯で食事を楽しむためにも、日々のお口のケアを大切にしていきましょう。
まとめ
今回は、歯石の量だけでは分からない歯周病の進行度についてご紹介しました。
歯周病は、見た目だけでは進行度を正確に判断できないことがあります。
特に、歯茎の中に歯石がついている場合は注意が必要です。
歯周ポケットの奥に歯石が隠れていると、普段は自分で確認することができません。
そのため、気づかないうちに歯周病が進行していることもあります。また、歯周病は痛みなどの自覚症状が少ないまま進行する場合があります。
だからこそ、「痛みがないから大丈夫」と思わないことが大切です。
歯科医院では、歯周ポケットの深さや歯茎の状態を確認します。必要に応じてレントゲン撮影を行い、歯を支えている骨の状態なども確認します。
そして、歯石が見つかった場合には、状態に合わせて除去していきます。しかし、歯周病のケアは歯科医院で歯石を取ったら終わりではありません。
毎日のセルフケアを続けることも、歯周病の予防や改善には欠かせません。
歯ブラシに加えて、必要に応じて歯間ブラシやデンタルフロスも活用しましょう。さらに、定期的に歯科医院でお口の状態をチェックすることも大切です。
「特に症状がないから」と放置せず、定期的なチェックを習慣にしていきましょう。
いつまでもご自身の歯で食事を楽しむためにも、
歯科医院での定期的なチェックと、毎日の丁寧なセルフケアを心がけていきましょう🦷✨
この記事は、西宮北口アネックスデンタルクリニック・矯正歯科 院長岡本大典が監修しています。


