
皆さんは今、どれくらいの期間、同じ歯ブラシを使い続けていますか?
たとえば「見た目はまだキレイだから大丈夫」ともいます。また、「交換するのをつい忘れてしまう」という人もいるでしょう。しかし、古い歯ブラシを使い続けると、さまざまなリスクが生まれます。
そこで本記事では、古い歯ブラシを使い続けることで生じるさまざまな問題に加え、正しい交換タイミング、さらには歯ブラシの管理方法についても詳しく解説していきます。
この記事の内容
古い歯ブラシが招く5つのリスク
1.歯垢が取りきれず、虫歯・歯周病の原因に
歯ブラシの役割は、歯垢(プラーク)をしっかり落とすことです。ところが、毛先が広がった歯ブラシでは、歯垢の除去率が30~40%も下がるという調査結果もあります。
その結果、歯垢は放置されると、虫歯菌や歯周病菌の温床になり、虫歯や歯周病、さらには口臭の原因にもなります。つまり、古い歯ブラシを使い続けることで、「磨いているのに虫歯になる」という本末転倒な結果を招いてしまうのです。
2.細菌が増殖し、口腔内の健康を脅かす

歯ブラシは、使用後に湿ったまま保管されることが多く、そのため雑菌が繁殖しやすい環境にあります。実際に長期間使っている歯ブラシには、1本あたり数百万個の細菌が存在するとも言われています。
もちろん、口の内にはもともと多くの常在菌が存在しています。しかし、古い歯ブラシに付着した菌が追加で口の中に入ることで、口内炎や風邪、扁桃炎の原因になることもあります。特に、免疫力が下がっているときや体調が悪いときには要注意です。
3. 磨き残しによる口臭の悪化
毛先が劣化した歯ブラシでは、歯の間や歯ぐきの隙間など、細かい部分まで届きません。結果として、食べかすや歯垢が残りやすくなり、それが腐敗して悪臭を放つようになります。
「毎日しっかり歯磨きしているのに、口臭が気になる」という人は、もしかすると歯ブラシの劣化が原因かもしれません。
4. 歯や歯ぐきを傷つけてしまう
意外に知られていないのが、古くなった歯ブラシによる「物理的なダメージ」です。というのも、劣化した毛先は弾力を失い、その結果、力を入れすぎることで歯や歯ぐきを傷つける可能性があるのです。
さらに、歯の表面のエナメル質が削れてしまうと、知覚過敏や歯ぐき下がりなどのトラブルを引き起こします。しかも、これは中高年だけでなく、若い世代でも十分に起こりうることなのです。
5. 全身の健康にも悪影響が?
近年の研究では、口腔内の細菌と全身の病気と関連していることが次々と明らかになっています。たとえば、歯周病菌が血液を通じて全身に広がることがあります。その結果糖尿病・心筋梗塞・脳梗塞・誤嚥性肺炎などのリスクを高めるという報告もあります。
つまり、たかが歯ブラシと思っていても、その衛生状態が体全体の健康を左右することもあるのです。
歯ブラシの正しい交換タイミングとは?
歯ブラシの交換時期については、日本歯科医師会や多くの歯科医が「1ヶ月に1回」を目安に交換することを推奨しています。
ただし、次のようなサインがある場合は、1ヶ月経っていなくてもすぐに交換しましょう。

・毛先が外側に開いている
・歯ブラシが変形している
・使用後にしっかり洗っても汚れが残る
・持ち手や根元にカビや変色がある
・使用後、異臭がする
また、風邪を引いたあとや、家族に感染症が出たときも早めの交換が望ましいです。細菌やウイルスが歯ブラシに残って再感染の原因になることがあります。
歯ブラシを衛生的に保つコツ
歯ブラシを清潔に保つためには、日頃のちょっとした習慣が大切です。
・使用後はしっかりすすぐ
歯磨き後には、歯ブラシを流水で丁寧に洗い、歯磨き粉や汚れをしっかり落とすことが大切です。すすぎが不十分だと、残った歯垢や唾液が菌のエサになってしまいます。
・通気性の良い場所で保管
濡れたまま密閉容器やカップに入れると、雑菌やカビが繁殖しやすくなります。なるべく風通しの良い場所で、毛先を上にして立てるように保管しましょう。
まとめ
歯ブラシは消耗品です。そのため、「もったいない」と思って長く使うことが、かえって健康を損なう原因になってしまうこともあります。
では、古い歯ブラシを使い続けることで起こる主なデメリットをまとめておきましょう。
・歯垢の除去力が落ち、虫歯・歯周病・口臭の原因に
・雑菌が繁殖し、口内炎や風邪のリスクが上昇
・歯や歯ぐきを傷つけて、知覚過敏や歯ぐき下がりの可能性
・口内細菌が全身の病気に影響するリスクも
つまり、正しい歯磨きをしているつもりでも、歯ブラシが古ければ、その効果は大きく損なわれしまいます。
だからこそ、清潔な歯ブラシに1ヶ月ごとに交換することは、口の健康だけでなく、全身の健康を守る第一歩なのです。
あなたの今使っている歯ブラシ、もしかするとそろそろ交換のタイミングかもしれません。ぜひ今日、チェックしてみてください。

この記事は、アネックスデンタルクリニック院長・岡本が監修しています。