
この記事の内容
はじめに
朝起きたときに、「なんだかアゴが疲れている」「歯が浮くような感じがする」と思ったことはありませんか?
実はその違和感、眠っている間に無意識にしている“歯ぎしり”が原因かもしれません。
歯ぎしり(ブラキシズム)は、本人が気づかないまま進行します。その結果、歯や顎にダメージを与えるだけでなく、さらに睡眠の質の低下や全身の不調に繋がることもあります。特に日常生活のストレスや睡眠リズムの乱れが関係しており、だからこそ決して放置してはいけない症状なのです。
そこで本記事では、「歯ぎしりと睡眠の関係」をテーマに、原因やリスク、セルフケア そして、歯科でできる治療法までわかりやすく解説していきます。
そもそも歯ぎしりってなに?
歯ぎしりとは、上下の歯を強くこすり合わせたり、噛みしめたり、カチカチと鳴らすような無意識の行動です。特に睡眠中に起きる歯ぎしりは、自分自身では気づきにくく、家族やパートナーに指摘されてはじめて知るというケースも少なくありません。
歯ぎしりには以下のようなタイプがあります。
主な歯ぎしりのタイプ
・グラインディング(grinding):ギリギリと歯を横方向にこすり合わせる

・クレンチング(clenching):強く食いしばる、上下の歯をグッと押し付ける

・タッピング(tapping):歯をカチカチと鳴らす

いずれのタイプも、歯や顎、筋肉に負担をかける行為であり、放置することでさまざまな問題を引き起こします。
睡眠と歯ぎしりの深い関係
歯ぎしりは、睡眠の中でも特に浅い眠り(レム睡眠の前後)のタイミングで多く見られることがわかっています。この時期は脳がまだ活動しており、夢を見ることも多いフェーズ。そんな中で、身体が緊張状態になると、無意識に筋肉が動いて歯ぎしりを起こしてしまうのです。
睡眠が浅くなる原因は?
・日中のストレスや不安
・就寝前のスマホやPC使用によるブルーライトの刺激
・過度なカフェイン・アルコール摂取
・睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害
・生活リズムの乱れ
このように、歯ぎしりは睡眠の質が低下しているサインとも言えます。つまり、単なるクセではなく、「体が無意識のうちにストレスに対処しようとしている反応」だということを、まず理解しておきましょう。
歯ぎしりが体へ起こす影響
1. 歯へのダメージ
歯ぎしりによる摩擦は、歯のエナメル質をすり減らしたり、割れたりする原因になります。ひどい場合には、知覚過敏や歯根へのダメージを招き、治療が必要になるケースもあります。
2. 顎関節症(がくかんせつしょう)
強く食いしばるタイプの歯ぎしりでは、顎関節に大きな負荷がかかります。
「口を開けるとカクカク音がする」「アゴが痛くてあくびができない」といった症状がある場合、顎関節症を疑いましょう。
3. 筋肉や首・肩のコリ
噛みしめが続くことで、アゴ周辺の筋肉が緊張し、肩や首のこり、頭痛といった全身の不調に波及することもあります。歯ぎしりはアゴの問題に留まらず、慢性的な体の疲労や痛みの引き金にもなるのです。
4. 睡眠の質の低下
頻繁に歯ぎしりをする人は、深い眠り(ノンレム睡眠)に十分に到達できていないことがあります。つまり、寝ていても脳や筋肉が完全には休めていないという状態です。
「寝ても疲れが取れない」「すぐ目が覚める」と感じている方は、歯ぎしりが原因の可能性も。
歯ぎしりのセルフチェック方法
歯ぎしりは無意識の行動なので、日中には気づかないことがほとんどです。以下のチェックリストで、自分に思い当たる点があるか確認してみてください。
・朝起きたときにアゴが疲れている
・歯がすり減っている、削れている
・頭痛や首・肩こりがある
・歯が欠けたことがある
・家族やパートナーに「歯ぎしりしてる」と言われた
・口を開けるとアゴが鳴る
・就寝中に目が覚めることが多い
複数当てはまる場合は、歯科医院への相談をおすすめします。
歯ぎしりの対策と治療法
1. 日常生活でできるセルフケア
・就寝前にリラックスする時間を設ける(ストレッチや軽い読書)
・寝る前のスマホやPC使用を控える
・カフェイン・アルコールを控える
・ストレスを感じたらこまめに発散(運動・日記・話すなど)
2. 歯科での専門的な治療
・ナイトガード(マウスピース)の装着

就寝中に着けることで、歯の摩耗を防ぎ、アゴの負担を軽減します。
・噛み合わせの調整
歯ぎしりの一因となる不自然な咬合を整えることで、症状の改善が期待できます。
・ボトックス注射
咬筋の緊張を一時的に緩める治療法。強い噛みしめ癖がある方に検討されることがあります。
・睡眠外来との連携
睡眠時無呼吸症候群や不眠症などが疑われる場合は、専門医との連携で根本的な改善を目指します。
歯ぎしりは「体からのサイン」。無視せず、早めのケアを
歯ぎしりは、私たちの心と体のバランスが崩れているサインでもあります。
「寝ている間のことだから自分ではどうしようもない」と諦めず、日常のストレスを見直すこと、睡眠環境を整えること、歯科医に相談すること
どれも、すぐに始められる対策です。
まとめ
歯ぎしりは睡眠の質やストレスと密接に関係している
無意識でも、歯やアゴ、体に大きな負担をかけている
自己判断せず、歯科での早期対応が大切
ナイトガードや生活習慣の改善が有効
睡眠の質を見直すことが、歯ぎしり改善の第一歩になる
毎日の「何となく不調」は、実は夜の歯ぎしりが関係しているかもしれません。歯ぎしりは自分では気づかないクセだからこそ、気づいた今が見直すタイミングです。
👉歯ぎしり・食いしばりについての記事はこちら
この記事は、アネックスデンタルクリニック院長・岡本が監修しています。
